

夕暮れの赤坂・一ツ木通り。ふと立ち寄ったカメラ店のなかに、粋な夏の帽子を手にしたM山猛さんの姿を発見しました。「おひさしぶりです。最近どぉですか?」とご挨拶すれば、ニコニコしながら「最近は、ライカじゃなくてフォカですよ」と、これまた粋な返事が戻ってきたのでした。フォカ。いいですねぇ。と、店内を見回しても残念ながら在庫は1台もない。 その刹那、お店の方が「井上さん、丁度フォカが1台入ってきたところですよ」と、これまたナイスなタイミングのリアクションで入荷直後の物件を取り出してくれます。 |
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| フォカ。フランスOPL社のレンジファインダーカメラ。コイツを“ライカコピー”と称すと、きっとフランス人は怒ると思います。第二次世界大戦中に開発が開始され1945年に発売されたフォカには、ドイツのカメラとは一味違った雰囲気をかもしだしているのです。初期のモデルではシャッターダイヤルと同一の巻き上げノブを回転させる方式でマウントもネジ式でしたが、ボクの入手したのは後期のユニバーサルRと呼ばれるモデルです。 |
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で、何がユニバーサルなのかと言えば、マウントがバヨネット式になって、内蔵された距離計に全ての交換レンズが連動するんです。すなわちユニバーサル以前のフォカでは、50ミリ以外の交換レンズでは距離計には連動しなかったんですね。(写真2) | |||||
| それじゃあ、ユニバーサルRの“R”の意味は? と気になるかもしれないのでご説明しますと、フランス語の“Retardateur”の略で、遅延装置すなわちセルフタイマーが内蔵されているのです。その位置は独特で、ちょっと心細くなってしまいそうな華奢なフォルムの巻き上げレバー基部にあるノッチを時計方向にチャージして使う仕組みなのであります。(写真3) |
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| フォカなんて不安定なカメラは安心して使えない。あるいは、あんなブリキ細工みたいなカメラに金を出す気にはどぉしてもなれない。もしくは、フォカで撮る写真なんて、みんな“ふわぁ〜”とハイライトとかが滲んで、どこでもパリみたいになる。などと悪口の標的にされがちなカメラではありますけれど、なんだか魅力があるんですよね。 |
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確かに横走りの布幕フォーカルプレーンシャッターの精度はライカに及ばず、撮影画面の中心と周辺でムラが出る傾向があったりしますけれど、ネガで撮るなら大丈夫ですし、ボクの入手したユニバーサルRに関してはシャシーや巻き戻しノブの部品が最終モデルであるユニバーサルRCと同一で、実存主義者のファッションみたいな格好良さです。(写真4) | |||||
| 小粋で華奢なカメラを、あえて選んでみるということ。丈夫なカメラも大好きだけれど、そればっかりではつまらないですよね。戦場を駆けめぐってグラフジャーナリズムの尖兵として活動するならいざしらず、趣味の世界であんまりタフすぎるカメラにばかり溺れていると、自分の弱さを見つめることから逃げてしまう気もするのです。こんなに直射日光にさらして光線漏れしないだろうか? 最高速度のシャッター先幕は、後幕に追いつかれてしまってはいないだろうか? ちょっと逆光ぎみだけれど、ゴーストとか出てしまっていないかしら? あれこれ気にしつつフォカで撮った写真は、そんな心配を吹き飛ばしてくれたのでした。(写真5-6) |
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| ボクのフォカには、機能的な問題なんてない。炎天下の東京を撮影しても、決してパリの様になってしまうコトもない。ああ、なんと素晴らしきかなフォカ! と、ごく普通に写真が撮れただけで気分がよくなるカメラとの付き合いってのも、やっぱり粋なもんですよね。 |
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ご挨拶 気がつけば、新・カメラバカ一代の連載も20回を迎え、これが最終回となってしまいました。最終回ですからドラマチックな展開とか、思わずホロリとくるカタルシスをご用意したほうがいいのかもしれませんけれど、いつもどおりの仕立てのままでオシマイにさせていただきます。写真趣味の日常は、アンチクライマックスの連続です。でも、その繰り返しのなかで日々のトキメキを感じられるのが楽しいものですよね。連載が終了しても、ボクのカメラバカな生活は続いていきます。そして、愛すべきカメラの近くには、いつでもアルティザン&アーティストのストラップやカメラバックがあることでしょう。ながらくのご愛読、ありがとうございました。 ガンダーラ井上 拝 新・カメラバカ一代 完 |





